ミュージカル

ディズニーの「ノートルダムの鐘」がd&b Soundscapeでステージにカムバック。

ディズニーのミュージカル「ノートルダムの鐘」が先日、ウィーンのローナッハー劇場で上演され、何度もの受賞歴のあるアラン・メンケンとスティーブン・シュワルツの両氏のソングライティングが、ヨーロッパでも指折りの壮大なオペラハウスの舞台で披露されました。そして、こちらも受賞者であるサウンドデザイナーのギャレス・オーウェン氏が制作に復帰。彼が同作品に携わるのはこれが6回目ですが、今回はd&b audiotechnikのSoundscapeを利用してショーのサウンドを強化しました。

© VBW / Deen van Meer

d&bサウンドスケープの代表的な支持者であるオーウェン氏は、2018年にドイツのボーフムで行われたアンドリュー・ロイド・ウェバーの「スターライト・エクスプレス」で初めてこのシステムを使用して以来、このシステムの主要ユーザーとなっています。今では彼は、世界中で上演される多くの作品の約半数でSoundscapeを採用しています。

伝統的で、より“純粋な”音楽パフォーマンス用に建築設計された空間では、Soundscapeはサウンドシステムの透明性を高めて、こうした環境により順応させるのに役立ちます。

Soundscapeはこのショーにとって最上の選択でした。これを採用するのに適したショーだからです。この演目の壮大なオーケストラ・スコアがSoundscapeで観客に届けてほしいと訴えてくるようでした!ギャレス・オーウェン氏 サウンドデザイナー

見切れという観点からも、Soundscapeがより優れていました。「あの空間にはタイトなプロセニアムがあって、比較的狭いスペースとなっています。従来のプロセニアム向けスピーカーシステムでは、ステージの開口部がおそらく10%ほど閉じられてしまったことでしょう」とオーウェン氏は言います。「Soundscapeは正しい選択でした。少しも後悔していません」。

そして次のように言います。「この劇場は間違いなく今後の1つの指標になることでしょう。ローナッハー劇場はオペラハウスとして設計されました。その音響はオペラには最適ですが、スピーカーを入れるのはほぼ冒涜的でさえあります!このプロセスの大部分は、Soundscapeを用いての音響の処理であったと言えます」。

© VBW / Deen van Meer
© VBW / Deen van Meer

Soundscapeの中心にあるプロセッシング・エンジン、DS100は、新しい創造のチャンスと能力を生みます。ソフトウェアモジュールのEn-Sceneを使用すると、デザイナーは音源を空間内の“オブジェクト”としてポジショニングし、そこに生命を吹き込むことができます。この空間化が精確に定位され、ホール全体で解像度が認識されます。このツールセットは、シンガーやダンサーが登場する、動き豊かなミュージカル制作において、“リアル”でイマーシブな体験を観客全員にもたらします。

さらなる強力な創造の可能性を提供するのがEn-Spaceモジュールです。これにより設計の次元がさらに1つ加わり、パフォーマンスと観客は、数あるワールドクラスの会場から選んだ音響“シグネチャー”に包まれます。そうした会場の音響特徴を緻密にレコーディングすることで作成されたこれらの特性は、サウンドエンジニアがパフォーマンスを向上させるために利用できます。

Soundscapeは、より高い水準の創造性とリスナー体験を可能にします。オーウェン氏の言葉を借りると:

従来のサウンドシステムでは、達成できるクオリティーには上限があります。比較的早くそこに辿り着くことができますが、それ以上を叶えることはできません。Soundscapeを利用すると、その天井を突き破ることが可能になり、達成できるものの全体的なポテンシャルが高くなります。ただ、そのポイントに到達するプロセス、あるいは実際に、プロセニアムシステムで達成できるポイントに到達するまでのプロセスは、もっと長くかかりますが、それはやるしかないのです。ギャレス・オーウェン氏 サウンドデザイナー

Soundscapeは創造の可能性を無限に広げます。結果がそれを物語っています。オーウェン氏の最新のオリヴィエ賞(「Come From Away」)とトニー賞(「MJ: The Musical」)は両方とも、d&b Soundscapeを使用したショーでの受賞です。「音響は両方のショーにとって極めて重要です」とオーウェン氏は言います。「音響はもちろんMJを特徴付けるものです。そして、会話が多いショーであるCome From Awayでも決定的に重要です。すべての言葉が聴こえないと、すべてが崩壊してしまいます」。

Soundscapeは、あらゆるd&bラウドスピーカーシステムと併用できます。このショーのために、オーウェン氏のチーム—アソシエイト・サウンドデザイナーのアンディ・グリーン氏とアシスタント・サウンドデザイナーのロブ・ジョーンズ氏を含む―は、d&bの新しいAL90を選びました。これは、A-SeriesとSoundscapeを組み合わせた初の導入です。3本のAL90からなるアレイが9つ、V-Subが組み入れられた前方トラスの上に設置されています。さらなるローエンドはデッキ上のSL-Subから発せられ、ステージ フロント全体に組み込まれたE6フロントフィルが全体像を完成させます。

そしてTiMax D4追跡システムを用いて、サウンドオブジェクトを自動的にポジショニングし、オブジェクトの位置を更新します。En-Snap ショー・オートメーション内にある新しいモジュールは、オーウェン氏のShow Control Ltd社がSoundscapeのために開発したもので、追跡システムをSoundscapeのワークフローと自動化に統合することがこれで可能になります。

「これにより、異なる時間に、異なる人のためにトラッカーをオン/オフにすることなどができます」とオーウェン氏は語ります。「ですから、ステージの外で歌っている人がいる場合、オブジェクトを袖に置くのではなく、ステージの周りに広げるようにプログラムできます。システムのセットアップにはd&b R1を使いましたが、オブジェクトの操作とトラッキング・システムの制御はすべてEn-Snapで行いました」。

ミキシングはStagetec Aurasを介して行われます。オーウェン氏はこれを「信じられないほど素晴らしいサウンドのデスクで、競合他社のものよりもはるかに優れている」と評価しています。

オーウェン氏にとって、“素晴らしいサウンド”のデジタルコンソールとd&b Soundscapeの創造力の両方を駆使してオペラハウスでミュージカル作品をデザインすることは、単なるA/Bテストとはまったく異なります。それ故に彼は自明のことながら、成功を収めた要因にただひとつのファクターを推挙することを躊躇します。「ただ私に言えるのは、こうしたテクノロジーの組み合わせにより、私の見解ではこれまでにこの劇場で達成されたいかなるサウンドよりも優れたサウンドをここで達成できたということです」。

VBW(ウィーン劇場協会)の劇場の音響責任者、パトリック・ポリー氏は次のようにコメントしています。「ステージのあちらこちらに立つ様々な演者から非常に多くのインプットがある『ノートルダムの鐘』のようなショーでは、誰が話しているかを聴き取れると非常に助かります。これで明瞭度が大幅に向上します」。

彼は次のように締めくくります。「ギャレスと彼のチーム、そして現地の音響クルー全員が素晴らしい仕事をしてくれました!彼らと一緒に仕事をして楽しかったです。特にオーケストラのサウンドについては、非常に好意的な意見が寄せられました」

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