ツアーとコンサート
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ツアーで実力を証明

ツアーでは、Soundscapeが設計した拡張性の価値が証明されました。Kraftwerkは会場を見て、可能な限り最善の構成を決定し、それに応じて仕事を進めます。言い換えれば、少なくとも180°の、臨場感あふれるオーディオにまで進化しても、トップのPAクルーが誇りにする、機敏でスピーディーな修正癖は変わりませんでした。「トラックに積めるスピーカーの数には限りがあります」とEinsiedelは同意します。「しかし、使用する数は、重量またはカバレージといった通常の理由から、一晩のうちに変更することができます。もちろん、それは必要なことでもあるのですが。だから、ワークフローをR1とArrayCalcに統合すると非常に便利なのです。そうすることによってソリューション全体がツアーに適したものになるからです」

Jimi Hendrixがギターのデザインを手伝うかのように、Kraftwerkのようなグループを、まったく新しい世代のサウンド強化技術の事実上の開発パートナーとすることで、Soundscapeの存在が際立ちます。彼らが「Trans-Europe Express」のコンポーザーとしての要求に応えつつSoundscapeの可能性を探求する一方で、その技術は非常に信頼できる人々の手によって洗練され続けており、そのメリットはパーフェクトなものとなっています。

Kraftwerk 3Dヨーロッパ・ツアーをSoundscapeで。

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エレクトロニック・ミュージックの伝説的存在であるKraftwerkの小さな助けのもと、d&b audiotechnikのSoundscapeプラットフォームはツアーに適しているとすぐに証明されました。

Kraftwerkがポピュラー音楽に与えた影響は誇張してもし過ぎることはありません。Elvis PresleyやBeatlesと同じ引き出しに入れる人もいる一方、彼らは何十年にもわたってあらゆる形態のエレクトロニック・ポップとダンス音楽制作に影響を与えているのです。こうしたことから、そして他の多くの理由から、彼らのコンサートは、熱心なエキスパートからなる大きな集団によって、人々の畏敬の念のもとで行われています。音楽の世界は多くの点で、彼らが先鞭をつけたことを続けていると言っても過言ではありません。

Kraftwerkのコンサートの魅力に欠かせないものの一つは、音響再生の驚くべきクオリティーです。これは、彼らの音楽に備わる複雑で引きつけるようなテクスチャーを実現するために非常に重要です。Kraftwerkは直近のコンサートでは3Dビジュアルを駆使しています。音楽が鼓動を打ち、うねる一方で、グラスを着用したオーディエンスは、揺れる円盤やコンピューター、フォルクスワーゲンのアウトバーンを目にします。こうした標準と実行可能な3Dサウンド・ソリューションとの組み合わせは、天国の結婚とでも言えます。観客数2,000人の屋内劇場や15,000人を収容する屋外会場から、d&b Soundscapeを利用したロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのソールドアウト・ショーまでにいたる、エレクトロニック音楽のパイオニアのヨーロッパツアーでこうさいたことが現実のものとなりました。

Soundscapeへの旅

KraftwerkとSoundscapeのシステム設計、ネットワーク・プログラミング、様々な困難なロケーションの間の関係を完全なものにするまで数年かかりました。d&bのSoundscapeのソフトウェアとアプリケーションのエキスパートであるFelix EinsiedelとRalf Zuleegは様々な提案をしましたが、大きな役割を果たしたのは、バンド自体です。「Kraftwerkは、システムを最適化するために、開発段階を通じて多くの仕事をやり遂げました」とEinsiedelは言います。「パートナーシップが進むにつれ、彼らはますます多くのことを行いました。彼らは最終的に、私たちのサポートが全く不要な80° Soundscapeシステムを採用して、東ヨーロッパのツアーを自らの手で行いました。そしてこれは、従来のような、毎日立て続けに行われるショーの枠内で実行されたのです。

バンドとクルーは、毎晩にわたってSoundscapeが使用されることとなったPAシステムのリギングとデリギングにとても熟達しました。Albert Hallをはじめとする会場で行われたいわゆる“カタログ”ショーでは、完全な没入感を生み出すために、より複雑な360°システムを設置する機会が発生しました。様々なプレス記事は、こうした画期的で印象深いショーに5つ星を与え、「サウンドの雄大なる視覚化」や「複数の感覚の壮麗さ」といった表現で褒め称えましたが、そこにはEinsiedelとZuleegの存在がありました。「彼らは今自らの手で多くをなしえると思います。つまり彼らは、スピーカーの配置方法や、ショー全体をどのようにプログラムするかといったことを理解しています」とEinsiedelは考えながら語ります。

ワークフロー

Soundscapeのワークフローを制作の他の部分に統合することによって、Kraftwerkのコンサートで見られるような複雑なシーケンスのプログラミングがはるかに簡単になりました。「必要なツールとしては現在、シミュレーション・ソフトウェアのArrayCalcとリモートコントロール・ソフトウェアのR1が挙げられます」とEinsiedelは説明します。「これらが基本的にうまく統合されているので、Kraftwerkのツアークルーは私のサポートをそれほど必要とはしません」。

そしてさらに深いところまで進みます。バンドの4人のメンバーは、ステージ上で仮想シンセサイザーを操作し、PAシステムの空間レンダリングに直接アクセスします。そうしてサウンドエンジニアSerge Gräfeが事実上バンドの5番目のメンバーとなります。または逆から見れば、Kraftwerk自身が第2、第3、第4、第5のサウンドエンジニアを務めているとも言えるかもしれません――彼らは熱意をもって賛同するでしょう――。

これを可能にしたのは、その間のオリジナルのMIDIリンクを完成させたEinsiedelでした。「SergeはiPadを持っています」と彼は続けます。「そして、彼は実際にPAシステムをもう1つのの楽器として使用します。統合されたOpen Sound Controlネットワーク・プロトコールとFigure 53のQLabショーコントロール・ソフトウェアとDS100プロセッサの制御オプションを使用し、この強力なワークフローを駆使して、全く新しいレベルのマルチメディアショーが生まれます。これはまだ進化中です。重要なことは、実際のツアーにおいて、異なるロケーションで、そして毎晩のように進化しているということです。それはどこかの研究所での実験でも、固定されたビデオ・インスタレーションでもありません」

さらに2つの重要なツールが、現在市場で利用されているSoundscapeソリューションのプラグアンドプレイ・ワークフローに定着しました。まず1つは、Gräfeが180°または360°のフィールド内にオーディオシステムを配置するためによく使用するオブジェクト位置決めソフトウェア・モジュール、En-Sceneです。そしてもう1つは、――Kraftwerkは専用エフェクトで使用していますが――、包括的なルームエンハンスや完全合成音響環境の再現さえも可能になる、補完的なEn-Spaceモジュールです。